星に願うなら
良く晴れた一日だった。夜、コンビニ行こうと外に出ると、空一面に星が輝いていた。こんなにきれいな星空は久しぶりだ、と思いながら夜道を歩いた。北極星、カシオペア、北斗七星と探して、南の空にオリオン座、シリウス。それらを含んだ冬の大三角形を探す。
高校ではフォークソング同好会を結成しバンドブームに反抗する一方、地学部にも入っていた。同好会は教室が割り当てられるだけで部室がなかったけれど、地学部は部室もちゃんと個室で用意されていたし、上級生も物静かな人たちばかりだった。それが非常に快適だということで入部した。実際そのとおりだった。しかも、入部した後に気づいたのだけれど、地学部の部室の窓を開けると目の前に階段があって、それは向かい二階にある運動系女子部の部室につづく階段で、時にとても眺めが良かった。 そんなわけで、地学に興味はほとんどなかったけれど、部室はおおいに活用させてもらった。もちろん地学部の活動自体は一体何をしていたのかほとんど知らない。 ただ、一度、夏休みに一晩、獅子座流星群を見るためにどこかの山奥でキャンプをするということで何となくついていった。たぶん暇だったのだ。 どこに行ったのか全く思い出せないけれど、とにかく山奥で深夜に僕らはビールを買うため、暗い山道を延々1時間かけて歩かなければならなかったし、帰りの登り道は急坂で更に時間がかかり、買い込んだビールもキャンプ地に到着するころにはほとんど飲み終えていた。そんなところだった。 しかも、獅子座流星群を見に行く、とだけ聞いていたのだけれど、実際には「観測する」ということだったようで、日暮れから明け方まで交代で流星の数を数える羽目になった。 部員が時計の針のように中心に足を向けて仰向けになり、自分の領域に流星が流れたら、「ハイっ」という。そして、それを記録者がチェックする。それだけのことだが、僕を含めて数人はだいぶ酔っていて、かなり適当にやっていた。 流星は意外と小さく、忘れた頃に、しかも一瞬しか流れなかった。こんなんじゃ願い事言ってる間もない、とその度思いながら、「ハイっ」と大声を出していた。知らない人が見たら、怪しい宗教の儀式にしか見えなかっただろう。 真夜中の山道でビールを飲みながらそれぞれが好きな人の話をしていた。誰かが「好きだぁ〜。」と叫んだりもした。調子に乗って次々と誰もが誰かの名前を叫んだ。旅は時に気持ちを大きくする、ってやつだ。何かが好転するわけでもないのに、妙に胸が躍る夜だった。 その日は今日みたいに雲ひとつなく晴れ渡っていた。都会育ちではないけれど、星で空が埋め尽くされるという表現にふさわしい星空を見たのはそのときが初めてだった。仰向けになると瞬く星空が落ちてきて、視界360度に星が降り注いだ。不思議な経験だった。 コンビニを出ると、更に寒さが増したようだった。 冷たい空気が降り注ぐ夜、今日はとても気持ちが満たされていて、そのせいか十数年前と意識がシンクロしていた。 自分が真面目なのか不真面目なのかよくわからない、と思った。 今という時間がいつまで続くのだろう。漠然と満たされた中でこれからオレはどうすればいいのだろう。 よくわからなかった。昔はなんでもかんでも理論付けにして処理しようとしていたけれど、最近はいろいろと少しズルい。 確かなのは、間違いなく目の前にあるものに向かって真っ直ぐに誠実に気持ちを向け続けるしかないってことだけれど。 そんなことを考えながら3月最初の日曜日が静かに終わった。
by mfls
| 2005-03-07 19:36
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